年7回、季節ごとの森を楽しむイベント「もりさんぽ」
2月のもりさんぽは、「ケモノ道トレッキング」を開催しました。
五味温泉近くの町有林を、動物たちの足跡を辿りながら散策します。
美桑が丘に集合し自己紹介をしたあと、バスに乗って、今回のもりさんぽの舞台となる五味温泉近くの町有林へ移動します。
町有林の入口に着いたら、まずは森を歩く上での注意事項と、このエリアで見ることのできる野生動物についての解説を聞きます。
それでは、スノーシューを装着し、森に入っていきましょう。
少し歩くと早速エゾユキウサギの足跡が。前あしが後方に縦一列に、後ろあしが前方に横一列に並びます。写真の足跡の主は、右に向かって進んだようですね。
すぐそばにもう一箇所ウサギの足跡が。跡がはっきりと残っているので、上の写真のものより新しそうですね。
引き続き進んでいきます。
この日はほどよく雲がかかっており、少し立ち止まって静かにしていると、鳥たちの声が聞こえてきました。スタッフが用意したバードコールで鳥たちとおはなしをしました。
次にエゾリスの足跡を発見。足跡のつき方はウサギに近いですが、ひとまわりサイズが小さく、前足・後ろ足がそれぞれ横一列に揃っています。
少し進んでみると、キタキツネの足跡が。キツネはモデル歩きで、歩いている時は足跡が一直線上に付くのが特徴です。今回は見ることができませんでしたが、駆け足の場合は前足・後ろ足がそれぞれ横一列に並びます
こちらはエゾシカの足跡。体重に対して足が小さく、脚が細いため、ほかの動物に比べ雪に深くはまりやすいですのが特徴です。写真のものは、跡がついてからそこまで時間が経過していないようで、蹄の跡がとても見やすくなっていますね。
森の中では、あちこちで根本の樹皮が剥がれた木が見られますが、これはシカやウサギの採餌によるもの。
エゾシカは特にニレ、ノリウツギ、タラの木を好んで食べます。
シカの歯は特殊な構造をしており、上の前歯が無く、代わりに歯茎が硬く発達しています。上の歯茎と下の前歯を、まな板と包丁のように使うのです。写真の食痕をよく見てみると、下から上に木の表面部分をはがし、食べていたのがわかりますね。
木の皮を食べるのはシカだけではありません。ウサギも木の皮を好んで食べるのです。草食動物にとって、木の皮は冬期間の重要な栄養源となっています。今回トレッキングを行った町有林では残念ながらウサギの食痕がみられなかったため、スタッフが用意したウサギの食痕をご覧いただき、シカの食痕との違いを比較しました。
シカの口が届く範囲の関係で、採餌が可能な高さのことを「ディアライン(Deer Line)」、または「鹿摂食線」と言います。群生しているノリウツギは、写真のようにディアラインが観測しやすくなっていますね。また、シカの食痕のついた木で、しばしば木全体が枯れているものが見受けられます。シカの採餌により、新しい細胞を作り出す役割を持つ「形成層」が破壊されると、その木は枯れてしまいます。
足跡や食痕、爪痕など、動物がのこした様々な「あと」を見ることで、その場に動物がいなくても、その姿や思考、状況を想像し、考察できるのが、ケモノ道トレッキングの魅力ですね。
だんだんと森が開けてきました。
このエリアの樹木には、ツルアジサイが絡みつくように生えています。風の強い日には、煽られて木から落ちたツルアジサイが雪の上一面に広がる、美しい光景を見ることができます。
さらに少し歩くと、森を抜け、まっさらな雪原に出ます。息を呑むような美しい景色です。
この日は空一面に薄い雲がかかっており、太陽の周りにハロ(別名「日暈」)を観測することができました。太陽や月からの光が、大気中に浮遊する氷の結晶と相互作用することによって生じる光学現象であるハロ。その語源となる「Halo」は英語で「輪」を意味し、「天使の輪」という意味でも用いられます。見た目・意味ともに美しい自然現象ですね。
真っ白な雪原の真ん中で、温かいお茶と下川産のはちみつ飴をお供に少しのんびりしたら、下山の前に、「あるもの」を見に行きます。
それは…
クマの爪痕です!!
木登りが得意なエゾヒグマ。この木にも、かなり上の方まで登った形跡がありました。
森を歩いていて、ふと上を見上げると頭上にクマが!なんて状況、通常はなかなか思いつきませんが、有り得ることなのだなあと思いました。
スタート地点まで戻ります。
横一列に並ぶ参加者のみなさんとその足跡。これもひとつの「ケモノ道」ですね。
お越しくださったみなさま、ありがとうございました!
(もりさんぽサポーター みーちゃん)