森の生活では、幼・小・中・高校ごとに15年一貫の森林環境教育を、教育委員会や学校・保育施設と連携して2009年から実施しています(プログラムは森林環境教育LEAFを参考に作成しています)。昨年度のまとめはこちら。
高校3年間を通じた森林環境教育の目標は「持続可能な地域経済のあり方について、地域資源の活用や、SDGs・ESGの観点を踏まえつつ、探究し、提案することができる」です。
2年生は 地域の資源を活かし、地域経済やSDGsに貢献するビジネスを考える 授業を行っています。
ですが「ビジネスを考える」と言っても、そう簡単に生み出せるものではありません。
まずは ビジネスのタネ を探すことから始めます。
自分たちの “好き” “不満” 地域の “資源” をとにかくたくさん書きだします。
毎回おもしろいコメントがたくさんあり、生徒さんたちの「現在」が垣間見える気がして楽しいです。3種類書き終えたところで、他のグループのコメントもチェック。
そのあと、 “好き” “不満” “資源” から2つ、もしくは3つを組み合わせたビジネスアイディアを考えます。
例えば “暑い” と “KPOP” で「KPOPの流れる扇風機」など。この時点では実現性は重要視せず、とにかく頭を柔軟に、たくさんアイディアを出すことを大切にします。
アイディアをひねり出したところで、次は実際に下川町で事業を営んでいる方に話をうかがいます。
戸田建設株式会社 の 三浦玄太さん。
戸田建設株式会社と下川町は、持続可能な地域社会の実現を目指して 地方創生に関する包括連携協定 を結んでおり、一の橋で夏いちごの栽培を中心とした取り組みを行われています。
下川町内で製造・販売されているスイーツなどにいちごがたくさん使われていること、町内はもちろん、名寄市・旭川市などでも販売されていること、ターゲットと届けたい商品の価値を明確に絞った販売を行っていること。
生徒さんたちにとって、三浦さんの話はどれも初めて知ることばかりでしたが、ビジネスをリアルにイメージすることができました。
さらに、バイオマスエネルギーや太陽光などの再生可能エネルギー活用や、障がい者の方の就労による福祉貢献に取り組んでいることもうかがいました。
三浦さんの話を聞いたあとでは、スーパーに並ぶ 下川町の夏いちご がまったく違う姿に見えそうです。
次は東京とオンラインで繋ぎ、一般社団法人エシカル協会 の 末吉里花さん による特別講義。
講演や中学校で授業を行うなど、下川町とは多くの縁がある末吉さん。
「私、下川町のこと大好きなんですー!」という嬉しい言葉から始まりました。
生徒さん全員が「エシカル」という言葉を聞いたのはこの日が初めて。
エシカルとは、人・地球環境・社会・地域に配慮した考え方や行動のこと であり、環境・社会・経済のそれぞれの側面をホリスティック(包括的)に見ることが大切 であること。
私たちとエシカルは決して遠い存在ではなく、日常の消費行動で何を選ぶかで、地域の活性化や、雇用なども含む人・社会・地球環境に繋がっていること。
生徒さんたちにとって、新しい価値観や考え方を得られたのではないでしょうか。
さて、お二人の話から得た視点をもち、自分たちのビジネスアイディアに戻ります。
考えたアイディアから一つ選び、5枚の紙芝居にまとめることで、ビジネスの核を明確にしていきます。
最後に、各グループのビジネスアイディアを発表しました。
地域の食材を使用したキッチンカー、空き地で行うライブビューイング、五味温泉の変わり湯の開発など、高校生目線のアイディアがたくさん生まれました。
下川商業高校では、3年生の課題研究で、1人で自分のやりたい企画を考え、地域の方の協力を得ながら実際にイベントや商品、サービスを形にするところまで行います。
今回の授業で行った、ビジネスアイディアの大事にすべき核をとらえて、他の人に分かりやすく説明するという作業は、来年へ向けてのいい練習にもなったと思います。
この日得た たくさんの視点や考え方を、これからに活かしてくれたらとても嬉しいなと思います。
(たなか)