森の生活では、幼・小・中・高校ごとに15年一貫の森林環境教育を、教育委員会や学校・保育施設と連携して2009年から実施しています(プログラムは森林環境教育LEAFを参考に作成しています)。
昨年度のまとめはこちら。
小学校・中学校では総合的な学習の時間を用い、毎年度、先生方と授業の目標や内容を相談しながら、一緒に取り組んでいます。
下川中学校の3年間の森林環境教育の目標は、「下川の林業・林産業の歴史と現在の取り組みを知ることを通じて、町の将来について考える」。
その目標にむかって、2年生のテーマは【身のまわりの木材の加工や活用方法について考え 木のよさを生活に生かそう】!
学校生活で役に立つ木製品を自分たちで考えて設計し、作る という内容で、5月~7月にかけて行いました。
このテーマでの総合学習は昨年に続き2度目。
今年新しく行ったのは「使用する原木を自分たちで選ぶ」こと。
これは、生徒さんたちが 1年生の時の総合学習 で、木工作家さんの話を聞き「1本の丸太を加工して何か作れたら面白いのではないか」と発表したことがきっかけでした。
生徒さんたちに丸太を選んでもらい、購入して加工し、その木材で製品を作る。
下川町であればそれが実現可能なことを先生にお伝えし、やってみよう!となりました。
「木のよさを生かす」ということで、まず初めに 木のよさって何だろう? を考えました。
製品を作る原材料として 木材 金属板 プラスチック板 の3種類の製造工程を調べ、比較してみます。
生徒さんたちからは「木材は他のふたつに比べ製造工程でCO2が出にくく、エネルギー消費が少ない」「プラスチックや金属は原材料を輸入に頼っている」などの意見が出ました。
さらに『下川町』というくくりで考えると、原材料である木の持続可能性が高く、木材の加工工場もたくさんあります。これは、人が働く場所があるということでもあり、持続的な町づくりにも繋がっています。
下川町にとっての 木のよさ は、単なる素材のよさ以上に多くの意味があることを、改めて確認しました。
次の授業では、木材の特性を確認。
板目や柾目など、木材の構造上の特徴から、製品を作る際に重要となる強度などを、実際に木材を手に取りながら確認しました。
その後は自分たちが作りたい木製品の設計を開始。
製品を作るための木材加工は “NCルーター” という機械を使うため、その設計の決まり事(直線と弧を使って書く、寸法はミリメートルで書く、など)を確認。
段ボールで模型を作って確認しながら、実寸大で模造紙に設計図を書いていきます。
次は、使用する丸太を選びに 三津橋農産(株) 北町工場 へ!
自分たちで選んだトドマツの原木に赤い印をつけてもらいました。
その後、その丸太が板材へ加工されるところを見学。まず、皮がむかれます。
その後、丸太がスライスされて板材へ。
工場や作業について職員さんに質問をしている間に、加工後の木材が生徒さんたちの元に揃いました。
こうした一連の流れをすべて見られるのも、快く協力してくださる地元企業さんがあってこそです。
この後、生徒さんたちは設計図の完成に向けて作業。
木材は乾燥を経て、下川フォレストファミリー(株) にて集成材へ加工したのち、NCルーターで生徒さんたちの設計図どおりに加工していただきました。
原木の加工と設計図の完成からひと月半後、いよいよ、加工を終えた材料とご対面です。
フォレストファミリーでも職人さんたちの手間がかけられていることを知った生徒さんたち。
壊れないように、丁寧に包みを開ける姿が見られました。
自分たちが書いた設計図の上に、出来上がったパーツを並べてみます。
各グループから「おーー!」「すごい!」と歓声が上がります。
2か月に及んだ総合学習も最終盤。
各グループ加工の仕上げ作業に入ります。やすりで整えたり、ニスを塗ったり。
各パーツを組み立てていきます。
ボンドを使ったグループもあれば、あえてボンドや釘を使わずに組めるように設計をしたグループもありました。
設計の時に気をつけて考えていた、強度は大丈夫?
作業後は、総合学習をふり返ってのまとめを個人で作成。
みんなで考えた工夫や、作業をしてみて難しかったこと、もっとこうすればよかったという反省や改善点などもたくさん書かれていました。
生徒さんたちが作った木製品を紹介します。
「みんなが休憩できる ロッキングチェア」
「先生たちの手が汚れにくい チョーク入れ」
「使わない時は分解してしまえる 収納棚」
「下級生や先生たちも使える トイレットペーパー入れ」
「ゴミ箱がない不便を解消する ウッドstation」
どの作品も、自分たちの学校生活で「こういうものがあったらいいのに」をしっかりと考え、形にすることができました。
生徒さんたちの設計図からNCルーターでパーツを切り出す加工をしてくださった、フォレストファミリーの職人さんからは
「自分たちが何かを作るときは、例えばゴミ箱なら設計はこうだよね、というセオリーがある。でも、生徒さんたちにはそういうものがないから、本当に発想が豊か。設計図を見て、よくこんなに考えたなあ!とビックリしました。加工していて楽しかったです」
と言っていただきました。
この学習は、森を中心とした産業がある下川町だからこそ、できるものだと思います。
ご協力くださった地元企業の皆様と、各グループのサポートにつき進行を支えてくださった先生方、そして、学習が一歩深まる提案を昨年してくれ、難しい作業にもチャレンジしてくれた生徒さんたちのおかげで、充実した学習となりました。
小学校から学んでいる “森を育て木を活用する” を生徒さんたちが新たな視点で考え、感じてくれていたら嬉しいです!
(たなか)