年7回、季節ごとの森を楽しむイベント「もりさんぽ」
10月のもりさんぽは「森の恵みとアイヌの暮らし 〜アイヌの人から自然を知ろう!〜」を開催しました。
講師として旭川の川村カ子トアイヌ記念館の川村久恵さんにお越しいただきました。
森に入る前に絵本「ほら、見てごらん」を読み聞かせです。
この絵本は仔グマがコタンを歩き回って、アイヌの人たちの生活を見て、生きる知恵やアイヌの世界観を学んでいきます。
そして、最後は主人公である仔グマ自体が「かみさま」だというところで締めくくられています。
絵本を通して、アイヌの世界観に触れたあとは、実際に森へ入っていきます。
今回歩いたのは林道の「パンケ幹線」です。
パンケというのはアイヌ語で「下」という意味です。
下川町の名前の由来は「パンケ(下)ヌカナン(沢や川)」です。
町内には他にもアイヌ語にちなんだ地名(班渓、珊瑠など)があります。
林道では歩きながらそこにある植物や動物の痕跡などの前で立ち止まり詳しくお話を伺いました。
イラクサは繊維を取り出して衣服に使っていたこと。
繊維を取り出すのは大変な作業だそうです。
オオウバユリ(アイヌ語でトゥレップ)は球根から澱粉が取れるので、食料として重宝していました。
2年前のもりさんぽで作った実際のでんぷんも見本として用意しました。
今の季節は花が咲いたあとにできる果実が熟し、種がぎっしりと入っています。
揺らして種を飛ばすのも楽しいです。
鹿の足跡がありました。
シカや鮭はそれ自体は神様という考えではなく、神様がもたらしてくれたものであるということ。毛皮やツノの利用方法なども教えていただきました。
本物の鹿ツノです。
トリカブトも発見。こちらは狩りをするときに根を用いました。
森には笹がたくさん生えています。
家を建てる時は笹を利用していたそうで、家を一軒建てる為に必要な量はトラック100台分とのこと。しかも昔はトラックなどはない時代です。
一軒の家を建てるためにかかる労力や時間は計り知れないものがあります。
さらに奥へ進むと茂みの中から熊が出てきそうな雰囲気…
熊は神様で肉や毛皮は人間へのお土産として神様の世界から持ってきてくれたもので、魂はまた神様の世界に戻ります。
仔グマを捕まえたときはある程度の大きさになるまで人間の手で育てます。
そしてその魂を送るため「イオマンテ」という儀式を行います。
人間へのお土産である熊の毛皮…触ってみたらどんな感じかな?
というように、穏やかな森の空気の中で一つ一つの植物や動物についてとても丁寧に教えていただきました。
森でのゆったりとした時間を過ごしたあとは美桑が丘に戻り、焚き火を囲みながら、お茶とおやつを片手にさらにお話しを伺っていきます。
お茶はプシネプイ(朴の木の実)を煮出したもの、
おやつはハッ(山葡萄)、クッチ(コクワ)、ニーヌム(オニグルミ の実)の3種類です。
朴の木の実のお茶は爽やかな味でした。コクワは熟していて甘く、山葡萄は酸っぱく、オニグルミは香ばしく、どれも美味しくいただきました。
これも全てカムイ(神様)からの恵みですね。
下川町にもかつてアイヌの方が暮らしていてチャシ(砦)やコタンがありましたが、和人による同化政策で名寄市の供与地に強制移住させられた歴史があります。
下川出身のアイヌの方では北風磯吉さんという日露戦争で活躍した著名な方もいらっしゃいます。
北風磯吉さんの生誕地には現在、碑が立っています。
また下川町民会館図書室には「北風磯吉資料集」という本もあります。
川村さんは「ぜひ自分の住んでいる町の歴史にも目を向けてほしい」と仰っていました。
その他にも暮らしのことやアイヌ文化についてお話ししていただいたり、参加者からの質問に答えていただいたりしました。
最後はみんなで記念撮影!
今回のプログラムを通して、アイヌの方々はカムイや自然への敬意を忘れずに、感謝の心を持って暮らしていたことがわかりました。また、和人による強制移住、迫害があったことなど歴史の一部も知ることができました。
現代に生きる私たちは、どうでしょうか。
自然との関わり方はこれでいいのか
本当の豊かさとは何か
など、自分のあり方をふりかえる機会をいただいたような気がします。
最後になりましたが、貴重なお話しをしていただいた講師の川村さん、ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
(ながお)